福岡空港のロビーを歩いていた。
「吉田さん、吉田さん、という声がする。
声のするほうに首を向けると、女性が2人立っている。
声はその内の一人がかけていた。
笑顔を振りまきながら。
私は一瞬大急ぎで巻き戻した。
去年の12月まで巻き戻したところで止めた。
巻き戻した画像に彼女の顔が写った。
あ~、と声を発した。
去年の12月に博多で行われた研修会で知り合った人だった。
急いでいたので挨拶だけして立ち去った。
……
しかし、それにしても、奇遇である。
そして、よくあれだけ大勢の人間の中から見分けたものである。
羽田に向かう飛行機の中で考えた。
今度は、いつどこで会うのだろうか、と。