昔なじみだった喫茶店に行った。
人懐こいマスターがカウンターの向こうで迎えてくれた。
昔はこの喫茶店に毎日のように通った。
30年前鹿島の下宿に入った同じ年にこの店も開店した。
食事が済んで文庫本を脇に挟んで喫茶店に行くのが日課になった。
珈琲を飲みながら読書をした。
通ううちにマスターや奥さんや常連客と親しくなった。
常連客で野球チームを作った。
試合が終わるたびに飲み会をした。
そのころは皆20代だった。
あれから30年。
みんな白髪交じりのいいお父さんになった。
常連客はちりじりバラバラ。
昔の常連客に会うことはほとんどない。
みんなそれぞれの所で生活の舞台を作っているのだろう。
久しぶりに行くと、昔話に花が咲く。
ここにはまだしゃべり場が残っている。
ただ、昔とは違うようだ。
饒舌なマスターが寂しそうに言った。
「傍若無人な年配者が多くなった」
なんか、わかるような気がする。