峠を越えると雲の合い間から青空が見えた。
風も穏やかで、雲の動きも遅い、視界も良好。
窓口で聞くと上陸できるかどうかは、島の周辺に行かないと分からないといわれた。
誓約書を書いて船着場に行った。
船着場は懐かしい。
訓練所に通っていた頃地元の船着場をよく利用した。
船着場はバス停や駅と違って独特の雰囲気がある。
……
船着場で知り合いの人に会った。
軍艦島の展示会をしたとき一緒に展示を手伝った人である。
やまさ海運の社長さんでもある。
人懐っこい笑顔で寄ってこられた。
お互い、まだ顔を覚えていたのでホッとした。
まだ、認知症にはなっていないようだ。
船に乗り込みいよいよ出発。
小刻みに震える振動が心地よく体の内外にしみこんできた。