中学時代のあだ名は『おやじ』だった。
トンギョ柿みたいに顔が長くて、ヌ~ボ~としていて、老けていたらしい。
ところが今は逆に若く見られる。
同級生に『万年青年』とまで言われる。
保険の外交員にこのくらいですか、と指を指された。
その指の先を見ると(35~40歳)と書いてあった。
そのまま頷くのもあんまりやろうと思い「今年還暦です」といった。
ええ~と一応驚かれて「私50歳ですよ」といわれた。
自分を基準に他人の年を考えるのだろう。
その方は髪の毛もまばらで顔に苦渋の皺が刻み込まれていた。
どう見ても私より上に見えた。
多分、苦労が多いのだろう。
……
「若くみえますね」と言われたら返す言葉を決めている。
「苦労をしていませんから」と。
正直言って苦労はしていない。
一応60歳まで生きてきて三人の子供を育てた。
人並みの経験はしてきたつもりだ。
でもそれは苦労でもなんでもない。
金銭的には「金は天下の回りもの」ぐらいに思っているから苦労したとは思っていない。
苦労しなくて済んだのは「家族が健康で何の問題も起こさなかったから」ではないだろうか。
「苦労は買ってでもせよ」というけれどこれは死語になっているのかもしれない。
最近あまり聞かなくなった。
買う価値のある苦労が少なくなったのかもしれない。
まあ、出来ることなら苦労はしなくて済めばそれでいいと思う。
……
肝心のことを書き忘れるところだった。
先ほどの外交員は前に座っている19歳の女性に「29歳ぐらいですか」と失礼なことを言っていた。