拝啓
K君お元気ですか。
早いもので君がいなくなってから9日になります。
何故いなくなったのか、そんなことはどうでもいい。
君が元気でいてくれればいいのです。
春が近いとはいえ夜はまだまだ冷え込みます。
どうしているだろうか、と案じています。
案じたところでどうにもならないのに!
20代の頃だったと思う。
どうしようもないときがあった。
今なら「軽うつ症」と診断されたかもしれない。
それほど落込んだときがあった。
無断で、会社を4日間も休んだ。
何もする気が起こらなかった。
外に出るのも嫌だった。
アパートの中で悶々として過ごした。
「人間、どうしようもないときがある、どうしようもないときに、どうかしろといっても、どうすることもできない」と自分を責めた。
でも、そんなときに救ってくれたのは友達である。
怠惰な私を見ても何も言わなかった。
何か言ってくれるものと期待してのに何も言わなかった。
ただ、「ラーメン」食べに行こうと言った。
黙々とラーメンを食べた。
食べる音だけが沈黙を破った。
アパートに帰っても彼は何も言わなかった。
そして、黙って去っていった。
翌日から、私は会社に出た。
太陽がまぶしかった。
会社の皆が懐かしかった。
暖かく迎えてくれた。
大袈裟かも知れないが、友達に救われた。
あのまま一人でいたら、どうなっていたか分からない。
K君にはそんな友達はいるのだろうか。
K君がいなくなって初めて気がついた。
彼にとって、私は何だったのだろうか、と。
友達のつもりだった。
でも、彼にとっては単なる人だったのかもしれない。
「せめて私に一言」何故言えなかったのだろう。
それを思うと、自分が情けなくなってくる。
自分は、何だったのだろうかと!
そしてこれからも、何になれば良いのか、と。