土手を超え、急斜面を登り、森を抜け、墓様の脇を通り、家に帰った。
通学路をまともに帰ることは殆どなかった。
道草を喰ったときの情景がまざまざと蘇ってきた。
急斜面の粘土質の黄土色した土が懐かしい。
雨が降ったあとの斜面はよくすべり、登るのに苦労した。
それでも、そこを通らずにはおれなかった。
森を抜けるのが楽しかったからだ。
森の中に鳥を捕るための罠を10箇所ほど仕掛けていた。
罠に獲物がかかってないか見てさるいた。
罠にかかっている獲物を見たときの興奮は今でも記憶のそこにある。
それは、餌に食いついた魚を釣り上げる瞬間に似ているかもしれない。
あの時の興奮や感覚は、あのときにしか味わうことができないのかもしれない。
いまだに、あんな感覚は味わったことがない。
もう、味わうことはないのかもしれない。