娘が帰ってくる。
地下鉄で唐津まで行くので迎え頼む、という電話があった。
仕事からやっと解放されたようだ。
今月は中旬から帰りが午前様だったそうだ。
2時半ごろ電話が来たことがある。
「明日の朝おこして~~~」と。
帰郷したらのんびり過ごして欲しい。
そして、鋭気を養って戻って欲しい。
長男はすでに戻っている。
毎日あきもせずパソコンとにらめっこしている。
次男は卒論の準備で戻って来れないそうだ。
今までのつけが回ってきたのだろう。
3人3様それぞれ違う。
違うけど、帰郷してくれるのはうれしい。
古い人間かも知れないが、故郷を忘れないで欲しい。
後は何しても構わない。
自分のやりたい事を、自信と誇りを持ってやって欲しい。
……
私も都会にいた頃帰郷するのが楽しみだった。
バスの窓から故郷の橋が見えると胸が高鳴った。
バス停に下りると心地よい空気に包まれた。
切符売り場のおばさんの顔が窓越しに見える。
氷屋の前を通ると、シャリシャリという音がきこえる。
海面を覗くと魚が泳いでいる。
そんな些細なことがとてもうれしかった。
家に足を踏み入れると、薄暗く、ひんやりとした。
あの感覚は忘れることはないだろう。
故郷はこころの中にある。
と、気づいたのはずーっと後になってからだ。