まくらといっても寝るときに頭の下に敷くまくらのことではない。
『前置きの言葉。落語家などが初めにつけて話す短い話』のことである。
落語に限らず前置きの言葉はとても大切。
聞く人をいかにひきつけるかは、この前置きの言葉にかかっているといっても過言ではない。
前置きの言葉のレパートリーを広げることは、話に幅をもたらすかもしれない。
……
私の義母さんは93ですよ。
93といってもバストではありませんよ。
年が93ですよ。
名前はカタカナで ツ ユ カ さん。
義母さんというくらいですからもちろん女ですよ。
タラン、としてますけど一応ついています。
義母さんのすごいところは好奇心が旺盛なところですよ。
サッカーだろうが、野球だろうが、ニュースだろうが、水戸黄門だろうが、興味津々でみています。
食欲が旺盛なところですよ。
里芋の煮っころがしだろうが、焼肉だろうが、ハンバーグだろうが何でもござれです。
いつもニコニコしているところですよ。
一寸おかしいのかな、と思うぐらいニコニコしています。
買い物だってバスを使って街まで買い物に行きますよ。
私たちに甘えることをしません。だから私たちもあまり面倒はみません。
暇を見つけては畑仕事に行きますよ。
色々収穫しては持ってきます。たまに、早く取り過ぎて実が白いスイカも取ってきますけどね。
週に3回はゲートボールに行きますよ。
腕前はかなりいいみたい。若いもんとしてきた、と言わすので年を聞いたら85歳でした。
最後に、不死身ですよ。
腕にサロンパスを貼っていらしたので、「どうしたのですか?」と聞くと溝に落ちたといわれました。
あとで見たらその溝の深さは1メートルぐらいあり、しかも下はゴツゴツの岩だらけでした。
……
前置きの言葉の練習でした。