働いても、働いても、生活楽にならず、ジッと手を見る。
有名な石川啄木の言葉である。
私は、この言葉を耳にしたとき、随分古風な詩だと思った。
啄木が生きた時代の固有のものだと思た。
しかし、最近、今の時代にも充分当てはまる詩だと思うようになってきた。
新聞の投書欄にも同じようなことが書かれていた。
いやむしろ、啄木が生きた時代より今の方がひどいかも知れない。
「ジッと手を見る」だけではすまなくなってきた。
見る余裕さえ失っている。
子どもから、老人まで、支離滅裂、無茶苦茶である。
「誰でもよかった」といって殺人を犯す。
滅私奉公のために自分を犠牲にしてうつ病を発症し過労死する人。
自殺者の数は3万人を突破して一向に減る気配はない。
……
せめて、生活苦のためにジッと手を見るのではなく、自分を見つめるためにジッと手を見たいものである。
自己実現に、思いを馳せて、ジッと手を見る。