この部落に来て23年、毎年欠かさず続けてきた風習が二つある。
その内のひとつが『風日』である。
豊作を祈願した浮立の一種である。
夏休みの最終日に高張提灯を持った2人の中学生を先頭に神社まで下る。
高張提灯の後には、竹笹の先につけた提灯を持った幼児や小学生や女性が続く。
その後は、青年や壮年の連中が笛、鐘、太鼓を鳴らしながら続く。
神社の前で、浮立を奉納して部落まで帰ってくる。
10年前は子ども達も多く賑やかな行列だった。
最近は子どもの数も少なくてなんとなく物足りない。
でも、夕闇の中を鐘を鳴らしながら練り歩く風景は幻想的で風情がある。
浮立の練習は盆が開けてから始めていた。
しかし最近は、1週間ほどしかしない、時間と気持ちに余裕がなくなってきたのだろう。
神社から帰ってきたら、公民館で酒盛り。
メインはこれで、このために人が集まるのかもしれない。
……
風日の次の日から学校が始まる。
祭りの余韻を残しながら子ども達は、家路につく。
夏休みの残り火を燃焼させて眠りにつくのだろう。
千鳥足でフラフラしながら上を見たら、上弦の月が下を眺めていた。
「月がきれいだね」と言ったら、「変なおじさん」と子ども達に笑われた。
明日から後半戦。
政権が変わり、世の中がいい方向に行けばいいのだが!