甥っ子が友達を連れて石川からやってきた。
芸術家の風貌をおびた彼の顔に昔の面影が残っていた。
20年の歳月は彼を穏やかな顔にしていた。
長崎に行きたいというので送っていった。
長崎に来た目的は軍艦島を見ることらしい。
長崎に直行するのも面白くないので外海経由で入ることにした。
ハウステンボスを抜け、西海橋を渡り、大瀬戸に入った。
左手に山、右手に海を見ながら曲がりくねった道を走る。
途中遠藤周作文学館に立寄った。
中には入らなかった。
遠藤周作は知らないというし。
聞いたこともないという。
だったら入る必要はない。
年代が違うのだ!
私が彼らの年代の小説家を知らないように、彼らも私の年代の小説家は知らないのだ。
文学館の白い建物は岬の先端にある。
断崖絶壁の崖っぷちに立っている。
シチュエーションはすばらしい。
甥っ子はそこから眺める景観には感激していたようだ。
やはり自然の力はすごい。
そこにあるだけで心を揺さぶる。
遠藤周作でさえ揺さぶることのできなかった甥の心を。
明日は、軍艦島で何を揺さぶられるのだろうか?
楽しい旅を!
私は、物置の掃除をします。
トホホ……