私は本当に心臓が小さいと思う。
からっきし度胸がない。
久しぶりに外泊をした。
外泊と言っても愛人の家に外泊した訳ではない、親戚のうちにである。
愛人の家に外泊できるほど度胸があればかっこいいのだが。
もっとも、そんな外泊をする前に愛人を作る必要がある。
それにはもっと度胸がいりそうだ。
とにかくただ単に親戚の家に外泊しただけなのに一人気をもんだ。
「外泊をした私を、妻は変に思ってないだろうか」と。
いつもと違う布団の感触を味わいながら妄想を膨らませた。
妄想は妄想を呼び至らぬ世界に入りこんだ。
妄想の世界から帰ってきたとき障子が白々と輝いていた。
現実に戻ってきてホッとして妻にメールをした。
「親戚の家にいるよ」
まるで居場所を確かめるように!
……
からっきし意気地がない!