薄暗い竹林のトンネルを抜けるとたまり場があった。
学校から帰ると、みんな自然にそこに集まった。
小高い丘になっていて、眼下に海や島並が見えた。
こじんまりとした丘から四季折々の海を眺めた。
キラキラ輝く夏の海には海水パンツひとつで降りていった。
穏やかな春と秋は釣竿を担いで降りて降りていった。
厳しい冬は長靴を履いて寒風に向かって降りていった。
丘は一面芝生に覆われていた。
芝生の上で寝転んで空を眺めたり、ぞうぐり(プロレス)をして遊んだ。
目の前には墓地があって、墓穴を掘っている光景を興味深く眺めた。
丘の上には松林があり、冬になると『松葉掻き』をした。
『まっかけ』の名の由来は『松葉掻き』から来ているのかもしれない。
松葉は七輪で木炭に火をつけるときの焚きつけにした。
正月明けにはお互い、餅とか小豆とか砂糖を持ち寄ってぜんざいを作って食べた。
夏はテントを張ってキャンプをした。
これらすべて自分たちだけでした。
大人は一切立ち入らなかった。
そこで、火のおこし方、ご飯の炊き方、味噌汁の作り方、テントの張り方などを学んだ。
10人前後で動いていたので、今もっとも必要な人間関係も学んだ。
今思うと、あの『たまり場』は第一の学校だったと思う。
そんなたまり場はあちこちにあった。
たまり場に行くと誰かがいて寂しい思いをすることはなかった。
……
でも、今はどうだろうか。
子ども達が本当に心が安らぐたまり場はあるのだろうか。
校内を徘徊している非行系の子ども達を見ているとないような気がする。
安らぐ場がないから徘徊するしかないのかもしれない。