もう随分前になる。
東京にいたころ、知り合った宮城の友人のところに遊びに行ったことがある。
そのとき、松島、石巻、気仙沼、平泉と旅をした。
その友人は不慮の病でなくなってもういない。
今回、震災で何回も映し出される海岸線を見ていて、友人のことを思い出した。
彼は中学を卒業して、私のいた会社に入ってきた。
初めての後輩で一緒によく遊びに行った。
東京に来て2年目だったと思う。
彼は不慮の病に罹り、宮城の田舎に帰っていった。
以来、彼は東京に戻ってくることはなかった。
あんなに元気だった彼が、と思うと無性に悔しかった。
短い付き合いだったけど、妙に記憶に残っている。
彼の家の裏山でバイクに乗って遊んだ。
彼の姉と3人で、凍りついた池の上で恐る恐る遊んだ。
松島や気仙沼の遠望。
光り輝く平泉の中尊寺。
それらはみな、思い出のページになった。
不慮の病で散った彼。
わずか一人の死でも悔しかった。
……
今回は、不慮の事故が幾重にも重なり合った。
あまりにも重く大きいので言葉にならない。
ただただ、沈黙するしかない。
不条理としか言いようがない。
神は、おそらく、いないのだ!