こころ支援研究所からの*笑顔ブログ*

見捨てられ不安

僕は変わり者である。
『変身』の主人公グレーゴル・ザムザより変わっていると思う。
でも、僕の主人はそのことに気づいていない。
何故なら、主人が生まれたとき、すでに僕はこの世にいたからだ。

僕は見かけによらずクールである。
クールでなければ、世の中を渡っていけないと決断したからだ。
僕ほど出会いと別れを体験している者はいない。
その度にメソメソしていたら、涙がいくらあっても足りない。
僕はクールでなければ生きていけないのだ。

朝から五月雨が道路を叩いていた。
僕は久しぶりに主人と出かけた。
駅の駐車場に着き、駅まで雨にうたれながら主人と歩いた。
いつも主人と一緒に電車に乗るのだが、駅で待っているように言われた。
何故なのか分からなかった。

太陽が真上に来たとき、五月雨は叩くのをやめた。
代わりに光が降り注いできた。
僕は光は嫌いだ、雨の方がずっといい。
だから皆に「お前は変わっている」と言われるのだろう。
でも、たまに光が好きな奴もいる。

そいつは、いつもご婦人と歩いている。
よくあんな口から先に生まれてきた生物と歩けるな~と思う。
僕は骨が砕けたって歩くつもりはない。
何か、シガイセンと言うシロモノからご婦人を守っているらしい。
何時からこんな軟弱な奴が出てきたのか分からない。

ある学者は、西洋から美の概念が入って来てから、と訳の分からないことを言っていた。
くだらん事をあれこれ考えていたら、光は斜めから射していた。

車輪のきしむ音をたてて、電車が滑り込んできた。
ご主人様のお帰りだ。
上下する頭の波の中に、主人の白髪が見えた。
やっと、退屈から開放される、羽根を広げられると喜んだ。

ところが主人は、スマートな僕の存在を無視するかのように通り過ぎって行った。
僕は、「シュジーンカムバック」と叫んだが、まったく耳に入っていないようだった。

光はすっかり闇にかき消された。
闇と共に寂しさが襲ってきた。
三度目だ、主人に放置されたのは。
僕は怒りと悲しみで一杯になった。
“絶望と悲嘆”にくれた。

しかしクールな僕は、事実は事実として受け入れる事にした。
何時までも悲しんではいられない。
気持ちを切り替えて新しい環境に馴染もうとした。
フロイト曰く、このプロセスは《悲哀の仕事》と言うらしい。
でも、そんなことは今の僕にはどうでもいい。

僕たちは忘れ去られる運命にあるのだ。
僕はまだ良いほうかもしれない。
友達は永久に忘れ去られ、駅の霊安室で眠っている。
殆どの者が数回の喪失体験を繰り返した後にだ。
僕だって明日はどうなるか分からない。

束にされ霊安室に放り込まれるかもしれない。
ミニの似合う女子高生の手で、花開いているかもしれない。


僕は名前だって可笑しい…………
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by cocoroshien | 2008-02-15 20:41
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